2021.11.14
『食品の裏側』の著者、安部司先生。
食品添加物・農薬・遺伝子組み換え食品など、食品の危ない実態を知り尽くした第一人者です。
私が手に持っているのは、最新刊の「安部ごはん」。(コレについては後ほど…)
先週の日曜日(11月7日)、安部先生とオプティマルキッチン欒(おうち)の辻井よしみさんの講演に行ってきました。
いつもながら、身のある講演会。
「食の現状を本来の和食へ・命を守る食卓・守るべきは子どもたちの未来」というお題。
辻井さんは、調理師であり、出汁・調味料・添加物・マクロビオティックなどに造詣が深い方です。食事を変えたことで、甲状腺の腫瘍がたった一年で消失した経験を持ち、「食事がもたらすカラダとココロへの影響を知ってもらう活動」にとても熱心に取り組んでらっしゃいます。
オプティマルキッチン欒(おうち)
さて、安部先生のお話。
安部先生によると、食品添加物そのものの持つ発がん性などの危険性もさることながら、食品添加物の持つ副次的な影響のほうがもっと深刻ではないか、と。
まずは、
①添加物の作用で、塩分・油分・甘みがマスキングされてしまい、塩・糖・油をとりすぎてしまうこと
そして、②人工的に作り出された濃い強い味で、味覚が崩壊してしまうこと。
少し説明しますね。
いつも安部先生がおっしゃるとりすぎ3兄弟。
①塩、②糖、③油の3つです。
本来、人間も自然の中の生き物なので、防衛能力があるため、塩辛いもの、甘いもの、油っぽいものなどすべて、自分の身体に悪影響なほどには摂らないようにできています。身体に悪いものは美味しく感じないように、あるいは自然とセーブするようにできているんです。
塩っぱい梅干しも、大辛の塩鮭も、味噌汁の味噌、そんなもんは全然こわくないと安部先生はおっしゃる。そんなにたくさん食べられないからって。
ところが普通には絶対に摂れないほどの塩、糖、油を、添加物が持つマスキング効果で、いとも簡単に、美味しく感じて大量に摂ってしまうのだそう。
たとえば、塩分なら、添加物の働きで、実際の塩分(絶対塩分)と味覚として感じる塩からさ(舌感塩分)に大きな開きができてしまうということ。
ホントです。
2009年4月11日、朝日新聞の記事の見出しは、「生活習慣病・高校生4割予備軍」
カップラーメンなどは、一食で、多いものだと8グラム近くの塩分を含むものあるけれど、普通に美味しく食べられてしまう。本来なら、海水よりも濃い味だから、普通は食べられませんよね。
油についても同じ。清涼飲料水に入っている糖も同様。添加物なしでは絶対に食べたくないほどの分量が含まれているそうです。
あ、ちなみに清左衛門のあの大辛の鮭茶漬の一袋全部の塩分が12グラム相当なんだから、カップラーメン一杯の塩分がどれだけ多いかわかりますよね。鮭茶漬なんて、ほんのちょっとしか食べませんからね。
そのカップラーメンが大好きな高校生達。実は、生活習慣病予備軍がすごく多いらしい。
カップラーメンは大量の塩だけでなく、麺の賞味期限を保つために油であげるために、大量の隠れ油が入っているのです。
知らずに摂ってる塩分、油分、糖分。
これらが知らず知らずのうちに、身体を蝕んでいきます。
さて、みんな大好きな濃い味のベースを作る黄金トリオは、①塩分・②旨味調味料(アミノ酸)・③たんぱく加水分解物の3つ。
会場でも、この白い粉三種をちょちょいと混ぜて水を入れてササッと作って下さいました。試しに飲んでみると、なんだか得体のしれない旨味。旨味はあるけど、添加物入り商品特有の後口の悪さを感じます。(気持ち悪い…)
コレがすべての濃い味のベース。得体のしれなかった旨味に、風味(香り)付けのエキスを加えると味が面白いほど変化します。鰹節エキスを入れるとカツオだし風、チキンエキスを入れるとチキンスープ風、ポークエキスやビーフエキスetc. で思い通りの味に。(後味の悪さは、どれも共通です。)
どんな味でもさじ加減ひとつで、ものすごく安価に作れてしまう。コレが、調味料売り場に華やかに並んでいる多くの商品の正体です。試しに成分表示を見て下さい。
たいてい、黄金トリオが並んでいますから…。原価はほとんどかかってないんです。
ちなみに、どういうわけか、たんぱく加水分解物とエキス類は、食品に分類されていて「無添加」の表示ができるので要注意です。だしパックとかにも多用されているので、一度気を付けて見てみて下さい。無添加といいつつギラギラした味のだしパックには、ほぼ入っているんでしょうね。
エキスは、基本的には、原料を高圧で煮出したものですが、抽出のためにいろいろな薬品や添加物を使ったり、ブラックボックスの部分も多く、食品の裏側を知り尽くしている安部先生でも、何が行われているかわからないといいます。(一体何を使って、どうつくられているか気持ち悪い感じがしますね。)
たんぱく加水分解物は、たんぱく質を工業的に塩酸や酵素を用いてアミノ酸レベルにまで素早く分解した物質で、とても強い旨味を持ちます。
この黄金トリオが作り出す、強い旨味に慣れ親しむと、自然な繊細な風味がわからなくなり味覚が崩壊してしまいます。黄金トリオは、各種だしの素、調味料、スナック菓子、お弁当お惣菜に多用されていますが、ベタッとした同じような味付になりがち。なるべく避けるようにしたほうが、滋味深い豊かな食生活を送れると思います。
清左衛門は、基本とても元気なしっかりした味ですが、かつて京都うね乃(心底まっとうな出汁屋さん)の釆野佳子さんに、「キタちゃんとこのは薄味やで!」て言われて驚いたことがあります。まさに、こういう意味だったんですね。
安部先生は、けっして、添加物の怖さを煽っているわけではなく、
①事実を知って、賢い選択をすること。
②食べ物は、人の心も身体もつくるものだから大切に向き合おう。命を頂いているという気持ちを持とう。(安直すぎる食事はよくない)
③一番信用できるのは、その土地に住む民族が独自の気候風土の中で、人体実験を経て築き上げてきた『伝統食』でしょう、とおっしゃってます。
あと、必ず強調されるのは、食品メーカーや流通だけに問題があるわけではない。とにかく①手間がかからず②日持ちがして、その上③綺麗で④美味しく、⑤できるだけ安いものだけを良しとする消費者に問題がある。
売れなかったらメーカーも作らないよって。
添加物まみれの食品を作らせたのはあなたたち消費者だよって。
野菜も大きさが揃ってきれいなものだけを選んできたから、必要以上に農薬がいるんだよって。
結局、消費者が、よく考えて、正しい選択をしていけば、自ずといい方向へ向かうはずなんですね。
さて、「安部ごはん」
『食品の裏側』を読んだ読者から、では、何を食べたらいいの?と聞かれ、「ごく普通の手作りの和食を食べて下さい」と答えていた安部先生。でも、それに対して「和食は作るハードルが高い!」「手間がかかる」といった声が多くよせられ、危機感を持った先生は、手抜きしても安全で美味しい食事を作るためのレシピ開発に乗り出したというわけです。
若かりし頃、食品添加物の商社のトップセールスマンだった安部先生は、高級料理店を食べ歩き、人気料理研究家のレシピを研究して、味の組成を分析、その美味しさの秘密を安い添加物に置き換えて加工食品のヒット作をかずかず作り上げてこられました。(今となっては消し去りたい過去ともおっしゃってますが…)
で、その分析と、味の構築を、家庭にあるものでできる5つの魔法の調味料に置き換えたのがこの本。
面白そうですよね。興味ある方は、ぜひ読んでみて下さい。
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